−レッツ☆ウォー− 


じょーかー☆戦争(2006.7.18)

「いい風ね、いっちゃん」
 夜、大して暑くなかったので窓を開けておいた。いつの間にか向こうから双葉が話し掛けてきて、他愛無い会話が続いている。恐らく双葉は、出窓で何かやっているのだろう。紙が、カードが捲られるような音がする。
「……双葉ぁ、さっきから何やってんだ?」
「トランプで占いをやっているのよ。あてにはならないけれど、面白いの」
「へぇ? やっぱり双葉も女の子なんだな。占いなんて」
 カードの擦れる音と共に、何気ない会話は続く。良い夜だ。
「あぁ、そうだ。いっちゃん、トランプにジョーカーってあるでしょう? 彼は可哀想だと思わない?」
「は?」
 訂正。お詫びを申し上げます。何気ない会話は別のモノに変貌を遂げました。
 双葉はトランプを捲るのを止めたらしい。静かな夜に、無機物への憐れみの言葉が響き渡る。
「だってね、ジョーカーはいつも一人ぼっちで仲間外れなのよ? ババ抜きの時だって、仲間外れを作る札で、望まない悪役を演じているんですもの。可哀想よ」
「はは……そーな。じゃあ、双葉が友達になってやればいいんじゃないか?」
 困った俺は、向こうからは見えないだろうが汗をかきつつ何とか答える。うん、今回は簡単な問題だったぞ。
 双葉は数秒黙った。何を考えているのやら。
「……。いっちゃんっ、あなたなんていい事を言うのっ? そうよね、私が彼のお友達になってあげればいいんじゃない」
「……」
 双葉はまともに賛成してくれた。素直なのか、単純……いや、純粋過ぎるのか。今更ながら、この幼馴染みの頭には付いて行くのも命懸けじゃないかと思う。
 ……これ以来、双葉がババ抜きで勝ったという話は聞いていない。奴は可哀想な仲間外れを庇い、手放そうとしないそうだ。

☆ 本日の試合結果。じょーかー勝利。


-レッツ☆ウォーtop-